京都大学 学術情報メディアセンターセミナー

大学の価値を可視化する:ユニバーシティ・アイデンティティとWebサイトのデザイン

大学におけるWebサイトの在り方-コミュニケーション,インフラ,予算から考える-

講演概要 : 日本で生まれ育って、いま40歳前後の方々はデジタルネイティブと呼ばれる世代に属しています。個人差を踏まえずにいえば30歳代と40歳代ではおなじネイティブであってもその感覚は異なるようです。大阪大学は若手へのウェブサイトの作成支援サービスを提供してきましたが、先生方のなかにおいて感覚的な世代交代が進んでいるという前提でサービスの中身を変えました。まずはこの点を手掛かりに、タイトルに沿って話題提供をさせていただきます。

すべて 個人の見解です。所属先とは関係ありません(^^;;)

0. 話の起点

  • ブランディングはことのほか重要ですよね(ずっと前から)
  • ブランドとは、相手AがこちらBをどう思っているかのかたまり、決断や選択(行動)の実質的な根拠になるもの、ブランドへの操作的な関与がブランディング。
  • A、Bには次のようなレベル感がある。
  1. 国レベル
  2. 地域レベル
  3. 業界レベル
  4. 機関レベル
  5. 組織レベル
  6. チームレベル
  7. 個人レベル
  • 実務としては、関与目的とこちらの状況、相手の状況、使える手段をまとめて考えてちょうどよいシナリオを書けるかどうか。
  • (大きな機関の場合)ばらばらになりがちな実務を束ねておけるような、中長期的にざっくりどうなりたいかの合意(やビジョン)が重要かもしれません
  • どう思ってほしいかと対になるのは、信用できる理由をどうやって提供するか → 参考(クリエイティブブリーフの項)

1. 研究情報発信支援サービス

大阪大学が研究大学強化促進事業(文科省)の一環として行っている「平成30年度研究成果の国際的発信支援プログラム:若手教員等研究情報発信支援」について紹介します。このサービスは次のレベル1と2で行われる情報発信に向けて提供されてきました。

  1. 国レベル
  2. 地域レベル
  3. 業界レベル
  4. 機関レベル
  5. 部局レベル
  6. チームレベル
  7. 個人レベル

趣旨

H28年度

学術研究における個々の教員の情報交流を促進し、大阪大学の研究力の強化につなげるために、研究大学強化促進事業の一環として、若手教員・女性教員・外国人教員を対象に、研究内容や業績などの情報を発信し、研究者コミュニティ及び社会とのコミュニケーションに活用するホームページの開設と運用を支援する。また、本事業によって整備・開設されたホームページ群が発展的に維持活用されるためのノウハウ提供も併せて行うものとする。

H30年度

本支援は学術研究における個々の教員の情報交流の促進によって自身の研究を発展させ、大阪大学の研究力強化につなげるため、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として、若手教員・女性教員・外国人教員(以下若手教員等とする)を対象に実施する。

具体的には、個々の研究者間の交流促進につながる情報発信の方法に関する相談対応と、情報発信に不可欠なウェブコンテンツ※の制作に関し、必要に応じて費用面での支援を行う。

※ ウェブコンテンツとはウェブページを構成する文章や画像、またそれらが表現する内容そのものの総称である。(H30年度募集要項より)

支援内容

H28年度

  1. 研究業績、研究内容等の情報発信やコミュニケーション活動など、個々の若手教員等の研究力強化に資するホームページを設置するための初期の相談を行う。(大型教育研究プロジェクト支援室の相談窓口が担当)。
  2. 本事業に採択された教員が制作作業を外注する場合は、20 万円を上限に必要な財源を配分する。(消費税込み)
  3. ホームページの運用に関する課題解決のための助言や、ホームページを活用するためのノウハウについて、求めに応じて提供する。(大型教育研究プロジェクト支援室の相談窓口が担当)。

  4. オプション

  5. ホームページの新規設置ないしはリニューアルの作業を外注する場合の、外注先の選択に関する助言、商談等への同席等の支援。
  6. 研究広報やアウトリーチ活動の実施に関する情報提供等の支援。

H30年度

  1. 個々の若手教員等が自ら継続して情報発信を行うための適切かつ効果的な手法の検討、研究内容の表現方法や多言語での情報発信方法、SNSの活用方法など、相談内容に応じて助言を行う(経営企画オフィスURA部門が担当)。
  2. 研究情報の発信や双方向性のあるコミュニケーションを目的としてアウトリーチ活動を行う場合、企画立案、会場確保、当日運営方法等についての相談に応じる。(例:市民を対象とするサイエンスカフェ等)
  3. ウェブコンテンツ(イラスト、写真等の素材、ウェブページのコンテンツ)の制作を外注する場合、6万円(消費税込)を上限に必要な財源を支援する場合がある。申請者からの要望があれば外注候補の選定についても助言する。

応募資格

H30, H28 共通

  1. 本学の若手、女性または外国人の常勤の教員・特任教員であること。(ただし特任教員については、運営費交付金または間接経費により雇用されている者に限る)
  2. 年齢 女性・外国人教員の場合:年齢制限はありません。若手教員の場合:次に掲げる条件のいずれかに該当する者であること。(以下略)
  3. 申請時点で他機関への異動、退職等が決定していないこと。(支援決定後、本学から異動する場合、その時点で支援を終了します。)

H30 追加

  1. 大阪大学研究者総覧を通じて「教員基本情報、研究、社会活動」等の情報提供を行っていること。(本支援は研究者総覧を補完する情報発信のために提供されるものです。)
    • 申請の時点で申請者の研究者総覧 研究者詳細ページの記載内容が不十分である場合は、本支援終了までに内容記入を完了させること。
    • 申請者の大阪大学研究者総覧は「Researchmap(独立行政法人科学技術振興機構)」とリンクしていること。
  2. 研究室や研究プロジェクトについての情報発信の場合は、申請者がその代表であること。

2. 変更の背景

利用者のニーズ、成果物とその後

ニーズ

  • 三十代前半PI目前の若手 → ラボ運営にウェブサイトは必須と考え、予行演習に着手(1/50)
  • 三十代中盤、著名ジャーナルに論文が載った直後の時機をとらえて、個人の情報提供基盤を整備(3/50)
  • ソフトウェア提供のプラットフォームとして活用、研究コミュニティへの貢献(1/50)
  • 実験データ提供のプラットフォームとして活用、研究コミュニティへの貢献(1/50)
  • 研究業績(研究、教育の取組などの結果蓄積されたもの)のアーカイブとして設置(3/50)
  • 授業運営のツール(資料配布)として活用(1/50)
  • 研究室運営のツール(学生募集広報)として活用(1/50)
  • プロフィールの提供、簡単な研究紹介(1/50)
  • 90年代風「ホームページ」の開設(2/50)

自前サーバ・独自ドメイン名 VS 大学のリソースを活用

  • 自前のサーバを確保 / 独自ドメイン(2割)
  • 大学のサーバで運用(8割)

アウトプット(アウトカム)

  • 口頭で

技術面での変化(コスト面)

サイト設置者個人にとって

  1. (+)レンタルサーバのコストは下げ止まり感がある。個人用としては十分なスペックのサーバが、独自ドメインと合わせて年間1万円以下で確保できる。さくらインターネットなど。
  2. (+)ウェブサイトの規格化も行くところまで行った感がある。Wordpress によるテンプレートサイトの設置は短時間で容易に可能。ビズベクトルなど。Bootstrap などのフレームワークも完成度が高く、これを使えばマルチデバイスサイトも容易に構築できる。

    参考

  3. (-)2000年代前半から一貫して Wordpress にはセキュリティ上の不安が付きまとってきた。
  4. (+)Google Translator の精度が著しく向上。日本語から英語への翻訳がよくなった。英語を運用上の中心に据えて、フランス語、ドイツ語などへ展開する例もある。
  5. 学外に個人でウェブサーバを借りてサイト設置することが、個人では不可能なほど大きな費用負担を伴うわけではない。運用できるスキルがあるなら、設置もできると見てよいだろう。

サーバ運営者(部局、機関等)にとって

  1. (+)ウェブサーバの仮想化(Docker 等)によって1台のサーバ内に複数のウェブサーバを走らせつつ、ハッキングされた場合のリスクを分散できる。導入コストは高くないが、運用自体は(まだ)やや面倒である。
  2. 100名以上の個人ユーザを抱えるウェブサーバーの提供サービスを行っている部局は稀で、またこれを維持するための人員(人月)も小さくはない。部局よりひとつ下の階層、専攻などが設置したサーバの中には管理者を失い、かえって面倒な障害になっている例もある。

個人が自前のウェブサイトを構え(オウンドメディアを持ち)複数言語で運用することのハードルが大幅に下がった。サイト運営をやるやらないは、設置目的と人的コスト(研究者自身の可処分な時間をどれくらい食ってしまうか)と便益の兼ね合いであろう。個人でウェブサイトを運用することは「本当にコストに見合うのか」を冷静に考えられるようになった。

参考

  1. このサイト(iwskd.com)は、Amazon S3 サーバを利用。月当たりのランニングコストは 70 円前後です。(ドメイン名を除く)
  2. こんなやりかたもあります。Evernote をウェブサーバとして使う

世代の交代・技術の使われ方の変化・若干の将来予測

  • デジタルネイティブ、1976年生まれ(76世代):Windows 95 の登場時に19歳、高校卒業後にパソコンでインターネットを使った世代
  • 86世代:写メール登場時点(2000年)で14歳、ケータイとともに中高時代を過ごした世代、義務教育で「HTML」を習っている人もいる。現在三十代前半
  • 96世代:iPhone 3 登場時点(2008年)で12歳、2台目ないしは1台目からスマホを与えられた世代、現在二十代前半
  • 研究を進めるにあたって必要な(最新)情報をどう得るかが、86世代後期から明確に変わってくるのではないか。エビデンス確認中。獲得方法が変わると「自分の情報をどう提供するか」も変化する → 独自のウェブサイトを構えるやりかたは(個人の情報発信としては)終息に向かう可能性
  • 大学(という機関)の主力メンバーにおける世代交代
  • Charles Mathies と Christopher Ferlandは、"Organization and Administration in Higher Education" の中で、高等教育機関の中で進行する世代交代とこれに伴う技術の使われ方の変化を見据えたうえでの(最終的には予算組に現れる)ビジョンの統合を Digital Strategy と呼んで論じている(第6章)

    Mapping the digital user's conception of "campus" is one of the most effective ways to gather information about various touch (interaction) points and user goals (Boag, 2014a). This mapping includes documenting both where and how digital users access the institution's network including the software or apps used, as well as the integration plans of digital technologies into classrooms and student learning support. Digital strategies should not come from data managers, the IT team, or even decision support units like the institutional research or assessment office. It is the senior leadership's responsibility to develop and integrate a digital strategy guided by the institution's strategic vision. The digital strategy ultimately needs to be more than a set of vague goals about meeting users' technology needs; it should be a detailed plan to integrate the concept of "how technology is used" within an institution's strategic planning, culture, and organizational structures (Boag, 2014b).

3. どこまで視野に入れるのか

経営的視点、といいますか。

  • 産学連携:民間企業との接続、連携
  • 人事給与:必要な人材の調達、育成、循環
  • 財務:経営資金調達、プロジェクト管理、ERP
  • 資産活用:経営資金調達(土地活用、同窓会、大学スポーツ、オンラインエデュケーションほか)
  • 研究力向上:研究戦略(組織、調査・企画・開発、評価、人事、大学ランキング対応)
  • 教育力向上:教育戦略(組織、調査・企画・開発、カリキュラム評価、人事)
  • 地域連携:地方自治体との接続
  • 外国企業との連携:契約、知財、国益、国際標準
  • 国際化:
  • 大学法人IR:制度・法整備、学内データの統合(ERP)、国の共通基盤
  • 経営:他のテーマを視界にとらえたうえでのリソース配分、理事会、組織、ガバナンス

こういうことを考える人は、情報発信の人たち(現場の人たち)を最初から巻き込んで、一緒に考えてくれるといいんですけどね。相互にどうつながっているのかがわからないと、断片的な情報発信になってしまいます。

4. ブランディングの話に戻ると

自分たちはどう思われているか・どこに手を入れるか

  • 某レポート(平成30年8月)の指摘「(一般納税者やメディア、企業など)関係者からの共感と協力を得られなければ、研究の原資を社会全体から調達していくことは難しい」をどう受け止めるか。
  • 本当に基本的なところをちゃんと(世間に)伝えているか?

理由の提示に使える経路

  • 研究者総覧 ?
  • Researchmap ?
  • 新たな制度による包括的なデータベース ? → いつ出来るのか、それまでどうするか

5. 参考資料

広告クリエイティブについて、詳しい人の話は耳慣れない言葉にあふれていて、煙に巻かれる感覚がありませんか。知らない用語に驚いているうちに、あいての土俵に連れ込まれていて、言いくるめられるというか。ホプキンスの本は(確かにちょっと古いのですが)自分の行動に照らして、自然によく考えることがどれほど重要かを確認できます。仁科の本はもう10年前のものですが、ブランドについて考えようとするときのインデクスを確認するために、まずはパラパラめくってみると良いように思います。

6. 連絡先