リサーチ・アドミニストレーター初級者向けオプショナル研修

アウトリーチを意識したURA業務(オンラインテキスト)

研修に参加される皆様は,このタイトルからどのような内容を想定・期待したでしょうか.大きくは2つに分かれるのではないでしょうか.ひとつは皆様が日々担当する業務の端々で,大学・研究所等の機関が行うアウトリーチ活動との接続を意識の片隅に置くという意味合いです.ご自身が関わる新事業の趣旨や効用を誰かに伝えたいというニーズ,あるいは機関のアウトリーチ活動を展開する際の材料を求められる立場であれば,こうした考え方は基本動作として身についておられるかもしれません.もうひとつはアウトリーチ活動を展開するときに使う思考法や発想法に,ご自身の業務にも利用できる便利な道具を探し求める立場です.他の専門職にとっては当たり前の考え方が,あなたの分野ではまだあまり利用されておらず,かつ有効かもしれない.前者を協業,後者を異分野融合と言い換えてもよいかもしれません.今回の研修は45分間という制限がありますので後者に力点を置きます.

1. アウトリーチを意識する

意識するには,アウトリーチという語の意味の輪郭を明らかにする必要があります.身近なところで,あなたの所属する機関では「アウトリーチ」をどのように定義していますか.時間に余裕があれば調べてみてください.予習として調査する必要はありません.一方,あなたご自身はどう捉えていますか.たとえば600文字以内で自由に述べなさいと求められたら冒頭で何から切り出しますか.これは1分間でよいので考えてみてください.

次に,手がかり2点をご紹介します.

例 1-1.

大阪大学におけるアウトリーチ活動とは、基本的に大阪大学の関係者(教職員・学生) が主体となって、しかし他の組織・機関等と連携・協力する場合も含め、社会からの理解と継続的な信頼を得て、地域に生き世界に伸びるために、学内・学外、場所を問わず、一 般の市民に対して、教育実践や研究活動に係る成果を、一般的啓発活動、教育的活動(専門知の普及・解説)、コミュニケーション活動(専門知と生活知との邂逅)の一環として、 パブリック・リレーションズの観点を踏まえ、持続的かつ長期的な基礎のもとに、自発的に無償の精神をもって提供する活動をいう。 (大阪大学におけるアウトリーチ活動とは:http://21c-kaitokudo.osaka-u.ac.jp/outreach/about

例1-2.

Penn State Outreach and Online Education plays a strategic leadership role in advancing Penn State’s 21st century land-grant mission by, first, providing access to the University’s rigorous undergraduate, graduate programs and non-credit programs to adult students studying at distance through online education; and, second, by improving the welfare of communities across the Commonwealth, nation and world through engaged scholarship and outreach programs that connect the University’s faculty and student expertise to impact societal issues and to inform the curricula, research and student learning. (Penn State Outreach and Online Education:http://www.outreach.psu.edu/about/

Discussion Prompts

  1. これらは互いに何が共通していて,どこが異なっているのでしょうか.比べてみましょう.違いの理由はどこに(何に)根ざしていると考えられますか.実際にリンク先を見た方がより想像しやすいと思います.
  2. 日本の国立大学の東京大学や京都大学はアウトリーチの定義をこのように公開しているでしょうか.米国州立大学のUC Berkeleyはどうでしょう. 探して見ましょう.

2. 外側を意識する

機関の行うアウトリーチ活動を考える場合には,自分たちは何に取り囲まれているか,そこにどうやってリーチするのかを考えます.考察に先立つ形で機関の経営行動から継承される目的や目標があり,これが活動の目標に分解され,あとはセオリーに従って条件を整理すればその時々で適切な方法が導出されるというプロセスを踏むはずです.しかし実務のすべてがいつもこの通り美しく整理されているとは限りませんので,あまり立ち入らずにアウトリーチ活動における外側の認識をURA業務に適用できないかだけを問います.今回は次の2つのレベルに沿って考えます.

  • 個人レベル
  • チームレベル
  • 部局レベル:URA組織の外側 ~ 所属機関の組織図を眺めて考える ~
  • 機関レベル:大学の外側 ~ 外側から考える,大学とは何か ~
  • 業界レベル
  • 地域レベル>
  • 国レベル

※ 研究機関所属の専門職の方へ:参考資料として得られる文献・著作等の都合で 「大学」 としていますが,適宜ご自身の組織に置き換えて解釈していただけるようにお願いいたします.

2-1.部局レベル:URA組織の外側 ~所属機関の組織図を眺めて考える~

アウトリーチ活動は,機関の中で以前から,先駆者によって,すでに豊かに取り組まれているはずです.ご自身が所属する部署・部局と機関全体の関係が分かる組織図をご用意ください.機関の公式ホームページやパンフレットに出ているもので構いません.

Discussion Prompts

  1. あなた自身やあなたの部署は,機関の中でどのような統制の元にありますか.
  2. 今担当されている仕事の発注主は誰で,誰にどのような報告をどのような頻度と手続きで行っていますか.
  3. 業務を行う際に,ご自身の部署の外に業務の調整相手が存在しますか.
  4. あなた自身の現在の仕事は誰に仕えるもので,その実質は何ですか.
  5. あなたの仕事はかつて誰か別の担当者が担っていたものですか.それとも全く新規に定義されたもの,あるいは今まで誰も担っていなかったものですか.
  6. あなたの仕事とよく似た(あるいは同じ)仕事が別の部署で行われているかどうか,把握していますか.別の部署で行われているとして,彼らと人的ネットワークを繋いでいますか.

2-2. 機関レベル:大学の外側 ~大学とは何かを外側から考える~

アウトリーチ活動では,大学の外にアプローチします.外から見て大学がどう見えているかによって,アプローチの切り口が変わります.アプローチしたい相手がどこにいるかも,最初から分かっている場合ばかりではありません.下の図表をご覧ください.クリックすると原寸 PDF で表示されます.これは2011年秋に私(岩崎)が同僚URA や産学連携,広報等の専門家の助言を受けながら作ったものです.<大学の外> とは何かを俯瞰する目的で取り組みました.作った当時はこれでも結構満足していたのですが,今になって見るとこれはやはり 「想像図」 に過ぎないことがよく分かります.大学で働いた経験があれば誰でも知っていることを綺麗に描いただけでは,新しい発見を生み出す原動力になりません.

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Discussion Prompts

  1. この 「想像図」 が想像図の域を出ない致命的な問題点はどこにありますか.もしあなたがこの図を「組織図」や「人体解剖図」のレベルに押し上げるよう,実質に近づけるよう求められたら,あなたならどの要素からの解明を試みますか.
  2. 大学とは何ですか.ご自身の大学観を文章で論述するとしたら,何に注目し,どのように構成してこれに着手しますか.

2-3. 余談です:自衛としての概念整理

今は担当していなくても広報・研究広報・アウトリーチ活動・サイエンスコミュニケーションといった概念のいずれかとご自身の業務が重なる日がいつか来るかもしれません.プレスリリースの作成,シンポジウムの企画,メールマガジンの発行,ホームページの運用といったタスクを担当しているなら,すでに関わっていると考えてよいでしょう.下の整理はそれぞれの動作が大学経営上の何と隣接しているか,主に誰が行うのかをざっと整理したものです.個別の機関によって設計は異なりますので,整理の仕方の参考としてご覧ください.

4つの動作 中心となる主体 隣接する事柄
広報 機関・部局 経営
研究広報 部局・機関 雇用,資金調達
アウトリーチ 機関・部局・個人 提供
サイエンスコミュニケーション 機関・部局・個人 提供
20170329151627

コミュニケーションという言葉の広がり

研究広報の実践例

日本語圏を離れる

サイエンスコミュニケーション

Discussion Prompts

  1. 機関の組織・理念・施策などの中で,これらの動作はどのように位置づけられていますか.
  2. 平成22年6月19日付で内閣府から提示された 『「国民との科学・技術対話」の推進について (基本的取組方針)』 (http://www8.cao.go.jp/cstp/stsonota/taiwa/)は上のどこに当てはまるのでしょうか.
  3. こうした概念整理は余裕のある時にやっておくとして,眼前の課題を良い方向で解決する手順を誰に求めるか目途は立っていますか.

3. 参考資料

今回の研修を担当させていただくにあたり,内容と構成を検討する際に参考にした資料を示します.当日は十分に触れることができないかもしれない部分もありますが,背景をお伝えする意図で掲載します.以下は8/24時点の概略で,確定版は研修日にお伝えいたします.

アウトリーチの定義(Discussion prompts 1,2)

組織図のバックグラウンドを考える(Discussion prompts 3~8)

ステークホルダー図の線は何を意味するのか(Discussion prompts 9)

法律

予算

研究

教育行政と学校経営

その他

大学とは何か(Discussion prompts 10)

歴史

哲学

システム

困難の核心に対する通用性の高い考え方(Discussion prompts 13)

その他

研修・OJT

目的・目標・戦略

統計

4. 余談として.自分で自分に研修を課すとしたら

※ 研修当日にお伝えいたします.

5. 連絡先・オンラインテキスト

テキストの最新版は以下のアドレスで提供します.リンクがアクティブなので,オンライン版の方が便利です.ご活用ください.

リサーチ・アドミニストレーター初級者向けオプショナル研修 / 2017年8月28日(月) あわぎんホール(徳島県郷土文化会館) 大阪大学 経営企画オフィスURA部門 リサーチ・マネージャー/学術政策研究員 岩崎 琢哉 / シラバス:https://www.rman-member.jp/event_detail.php?event_id=7